来るべき書物の予告篇

海外文学を中心とした書評、作家志望者のためのアイデアノート

2013-09-01から1ヶ月間の記事一覧

「書けたかもしれない小説」から来るべき書物

『完全な真空』 スタニスワフ・レム 自らの誕生を描く小説は、後戻りの第一歩に過ぎなかった。今ではもう、小説がどのように生まれて来るかを示す作品を書くものなどいない。具体的な創作過程の記録などというのも、あまりに窮屈だ! 今、作家たちが書いてい…

断片メモ、「未来派野郎」について

前回の追補として、“教授”/坂本龍一のアルバム=『未来派野郎』を紹介したい。 未来派の音楽化というより、彼らの活動をサンプリングしながら、そこから連想されるイメージを表したというべきか。 ブレードランナーやフィリップ・K・ディックといったSF…

断片メモ、幻想の未来派について

それは騒々しく、硬質で、スピードと大衆とテクノロジーを賛美した宣言によって始まった。 そしてそれはファシズムの熱に浮かされた軍靴の響きの中に消えていった。 Futurismo/未来派というのが彼らの活動の名である。 たしかに、彼らの活動はあまりに政治…

断片メモ、あたらしい物語について

これ(アルフレッド・ジャリの『絶対の愛』)は五十ページほどの小説で、それぞれ完全に異なった三つの物語として読むことが可能です。すなわち、(一)ある死刑囚の執行前夜の独房における観念、(二)不眠に苦しむ男が、半睡半醒のうちに死刑の宣告を受け…

イリヤ・カバコフから来るべき書物

『イリヤ・カバコフの芸術』 沼野充義 馬鹿げた奇想天外なものに見えるアイデアばかりだが、この一つ一つがユートピアという砕け散った「大きな物語」の破片なのである。 イリヤ・カバコフ(1933~) ウクライナ出身。「ソヴィエト連邦」を主なテーマと…